−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【ＳＳ】ＡＴフィールド
第７話「再会」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
アスカの包帯が取れた。しかし、数日間食事をしていなかったためからだはだい
ぶ衰弱していた。シンジはここ数日付きっきりで看病していたが、そのうちに蓄え
ていた食料も少なくなっていた。
この日、シンジは久しぶりの食料調達に出かけることにした。そしてある程度
体力の回復したアスカもそれについていくことにした。
しばらく無言で歩いていた二人はある異変に気が付いた。
「ねぇ、シンジ。たしかあの辺に・・・」
「うん、この前まであったのに・・・。もしかしたら何かあったのかも」
「急ごう、海に！」
「うん！」
二人はＬＣＬの海へ駆けていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ここはＬＣＬの海の波打ち際。黒いジャージを着た男が朦朧とした意識でまわり
を見回していた。
「一体ここはどこや・・・
確か病院のベッドで寝ていて・・・」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
それは戦自がネルフ本部に攻め入っている頃のとある病院。
「よっ、トウジ」
「鈴原、見舞いに来たよ！」
「おっ、ケンスケにイインチョーか、いつもすまんな」
「いいのよ。それより体の具合はいいの？」
「おお、だいぶ良くなってきたわい」
そんなたわいない会話を交わしている所へ数人の男が入ってきた。
「フォースチルドレン・鈴原トウジとチルドレン候補・相田ケンスケに洞木ヒカリ
だな」
「なんや、おまえら」
「これは・・・戦自の特殊部隊だ」
「なんで戦自が？」
「サードインパクトを防ぐためだ」
そして銃声。
「ケンスケ！」
「相田君！」
「イインチョー早く逃げるんや！」
「でも、鈴原！」
銃声
「フォース、及び候補２名排除しました」
『了解。サードインパクトの要因となるものは全て排除しろ。ネルフ関係者もだ！』
「了解、次へ向かいます」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「そうや！
ケンスケとイインチョーが見舞いにきてて、戦自の連中が攻め込んできたんや！
おおい！ケンスケっ、イインチョーっ、どこにおるんやぁ！」
トウジは起き上がりあたりを見回すとケンスケとヒカリが波打ち際に倒れている
のが見えた。
「イインチョー！、イインチョー！、無事か？」
「鈴・・・原・・・？」
「無事やったんな、おい、ケンスケ起きろや！」
「よ、よぉ、トウジ。ここは天国なのか？」
「何いうてんのや。ともかく無事やな」
「天国じゃないとすれば、ここはどこなんだ」
「知らんわ」
「それより、これからどうするのよ。
何か大変なことが起こったみたいだけど・・・」
三人はあたりを見回す。そこには焼き焦げた木々を瓦礫しか見えなかった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
シンジとアスカはＬＣＬの海へたどり着いた。しばらく誰かいないか探し回った
ところ、自分たちが知っている人を見つけ出した。
「トウジ！、ケンスケ！」
「ヒカリ！」
「おぉシンジ、無事やったんか」
「アスカ、無事だったのね」
５人はしばらく無事に再開出来たことを喜んでいた。
「ところでシンジ、一体何がおこったんだ？
もしかしてサード・・・」
ケンスケがそう言いかけたときシンジは辛そうな顔をしていた。
「僕が・・・僕が起こしてしまったんだ。サードインパクトを・・・」
「どういうことや、シンジ？」
「しゃべる必要なんかないわよ！シンジ！」
「いいんだ、誰かに聞いてもらいたいから・・・
僕はカヲル君を殺してアスカに酷いことをして・・・」
「カヲルって誰なんだ？」
「フィフスチルドレン、第１７使徒、そして僕のこと好きだっていってくれた・・・
そのカヲル君を殺してしまってアスカに酷いことをして見殺しにしてしまった。
ミサトさんも僕のせいで死んでしまった。
誰も優しくしてくれなかった。誰も僕をかまってくれなかった。
僕はみんな無くなってしまえ、自分も無くなってしまえって思った。
そしてみんないなくなった。僕もいなくなった・・・」
「それが、サードインパクトか？」
「うん・・・
でも、誰もいない世界で僕は思ったんだ。
何か違う。自分でもよく分からないけど違うと思った。
綾波やカヲル君のおかげで僕はもとの世界に戻りたいと思った。
僕はみんなに逢いたいと思ったんだ。そしてこの世界に戻った」
「そうか・・・」
「トウジ！僕を殴ってくれないか！
僕のせいでトウジの足は・・・
それに関係ない人まで巻き込んでしまった。
僕をなぐってくれ！」
「シンジのせいやない！
あのときエヴァはシンジが動かしてたんじゃないやろ。通信聞こえてたで。
それに、ああしてなければワイが世界滅ぼしてたかもしれんのや。
こうして逢えたんだからそれでええやないか・・・」
「トウジ・・・
でもトウジの足は・・・」
「足か？これが見えへんのか？」
４人はトウジの足を見て驚いていた。まわりが驚いているにも関わらず案外平然
ろしているトウジ。
「なんや気が付くと足がついとった」
「トウジ、ずいぶんお気楽だな」
「鈴原！良かった・・・」
「なんじゃイインチョー！
急に抱きついたりして・・・
は、恥ずかしいやないか・・・」
シンジはこんなやり取りをしながら、みんながいて自分がいるこの世界に戻って
きて良かったと思っていた。
「それより、これからどうするんだシンジ」
「トウジ達が戻ってきたということは他の人たちも戻ってくるかもしれないという
事だから・・・、どうしよう・・・」
「野宿か？そんなことなら俺に任せておけよ」
「おっ、さすがケンスケや。よっ、ミリタリーおたく！」
「トウジ、そういう言い方やめてくれないかな・・・
戦自に撃たれてみて分かったよ。ただ戦自の表面的なことにしか憧れていなかっ
たってことをな。でも、知識は活かさなきゃね」
シンジ達はこの後どうするかあれこれ話し合っていると、人の気配が近づいてく
る。振り返ってみるとそこにはミサトがいた。
「み・・・ミサトさん。無事だったんですか」
「えぇ、おかげで生き返ることができたわ・・・
おかえり、シンジ君・・・」
「・・・・・・た、ただいま」
「答えは見つかった？」
「よく・・・分かりません。でも、これからも探し続けていこうと思います」
「そう・・・」
「ミサト・・・」
「アスカ、ごめんね。あなたが苦しんでいるとき何もしてあげられなくて・・・」
「いいのよ、もう終わってしまったんだから」
「ごめんね、シンジ君、アスカ。それに鈴原君も・・・」
しばらくしたあと６人はＬＣＬの波打ち際から去っていった。
その日を境に数カ月にわたり、人はＬＣＬの海から帰ってきた。
第８話「平和な日常の中で」へ続く
戻る