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             【SS】ATフィールド
              第9話「二人の気持ち」
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 シンジが入院して3日がたった。頭を強く打ったらしくシンジの意識はまだ回復
していない。アスカは始めのうちこそ取り乱していたが、今は冷静になっている。
アスカはシンジの側から離れようとはしなかった。

 冷静になってみるといろいろな思いがアスカに浮かんでくる。

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 サードインパクトの後、あたしは変わったと思う。
 前はエヴァがあたしのすべてだった。
 エヴァが無ければ誰もあたしのこと見てくれないと思ってた・・・
 エヴァのことしか見ていなかった・・・
 回りのこと見ていなかった・・・
 見てもらうことしか考えてなかった・・・・・・
 でも今は、
 今はエヴァなんか無いけど、みんなあたしのこと見てくれている。
 あたしもみんなのこと見ている。

 じゃあ、シンジは、
 シンジはなんなの?

 あいつはいつのまにかあたしの中にいた。
 気が付くとシンジがいた。
 いつからいたの?

 マグマの中に助けに来たとき?
 ユニゾンのときから?
 それとも始めてあったとき?

 初めてあったとき、なぜシンジを弐号機に乗せたのだろう。
 ふすまを閉めたとき、なぜ悲しくなったのだろう。
 キスをしたとき、なぜ悔しかったのだろう。

 シンジはあたしを傷つける存在・・・

 だから、あの時シンジを拒絶した。
 シンジを拒絶した・・・


 でも、あたしの中からシンジは消えなかった。


 戻ってからもシンジと一緒だ。
 傷つくことがあっても一緒にいた。

 そのシンジは、今、寝ている。
 いつ起きるかわからない。
 起きてこないかも知れない。
 シンジがいなくなればあたしを傷つける存在はなくなる。
 シンジがいなくなればあたしを傷つける存在は無くなるはずなのに、

 シンジがいなくなるなんて考えられないあたしもいる・・・

 シンジがいなくても、あたしにはヒカリ達がいる。
 ヒカリは大切な親友だ。

 でも、ヒカリ達とは違う気持ち。
 シンジでなければいけない気持ち。

 そして、シンジがいなくなったとき、あたしはあたしでいられるだろうか・・・

 あたしにとってシンジはなんなの?

 他の人ならあたしを傷つけることはないだろう、傷つくことがないだろう。

 傷つける存在なのにそばにいると落ち着く
 傷つける存在だからそばにいると落ち着かない

 落ち着くのに落ち着かない
 落ち着かないのに落ち着く

 どうしてなの?
 どうして・・・

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 そのころ、シンジは夢を見ていた。

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 ここは、どこだろう・・・
 そうだ、車にはねられそうになったアスカを助けて・・・
 僕は・・・死んじゃったのかな・・・・・・
 LCLの海から帰ってきて、トウジやケンスケ達と再び会うことができた。
 前は友達と言えるような人はいなかった。
 トウジやケンスケだって、気が付けば一緒に行動するようになってただけだ・・・
 今はそうじゃない。
 僕の回りにはたくさんの人がいる。
 傷つけ合うこともあるかもしれないけど、昔よりは恐くはないと思う・・・

 でも、僕にとってアスカはなんなのだろう・・・

 わからない。
 わからないのに、すごく気になる。

 初めてあったときは正直苦手だった。
 にぎやかだったアスカ。
 壊れてしまったアスカ。

 僕はアスカを汚すことしかできなかった。
 そしてあの空間でアスカに拒絶された。

 戻ってきたときアスカがそばにいた。

 そして今・・・

 今でもアスカのこと傷つけてばかりいる・・・
 やっぱり、だめなんだ、僕は・・・


「本当にそう思っているのかい?」

 えっ、その声は・・・

「本当にそう思っているの?」

 カヲル君!綾波!

 だめなんだよ僕は・・・
 アスカのことが気になるのに、アスカを傷つけてばかりいる

「あの時ATフィールドが君や他人を傷付けてもかまわないって言ったんじゃ
 ないのかい」

 他の人たちなら大丈夫かもしれないと思う。
 でも、僕はアスカを傷つけすぎたんだ。

「他人の恐怖を感じているの?」

 他の人たちなら大丈夫かもしれないと思う。
 でも、僕はアスカのことがわからない。

「何が恐いの?」

 わからないんだ。
 わからないのに気になるんだ。
 でも、恐いんだ・・・

「本当に繊細だね、君の心は」

 そんなんじゃないよ・・・

「アスカ君のことが好きなのかい?」

 そんなことわからないよ。
 でも、アスカは僕のこと好きではないと思う。

「あたたはアスカさんに聞いたの」

 そんなこと聞けるわけ無いじゃないか

「ATフィールドは人と人を分け隔てている」

「だから想いは行動に移さなければ伝えることも伝わることもできない」

「僕たちはいつまでも君を見守っているよ」

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 そしてシンジは目覚めた。

「ここは・・・?
 そうか、夢だったのか・・・・・・」
「シンジっ!」
「アスカ?。ここは?」
「病院よ。3日間も寝てたんだから」
「3日も・・・」

 しばらくのあいだ二人の間を沈黙が漂う。
どのぐらいの時間が経っただろう。沈黙を破りシンジが口を開いた。

「ごめん、僕はアスカを傷つけてばかりいた」
「そうよ、あんたはあたしのこと傷つけてばかりいる」
「アスカが日本に残るなら、僕は部屋を出て行くよ。
 僕が近くにいるとアスカを傷つけてしまうから・・・」
「何勝手なこと言っているのよっ!
 あたしの心に勝手に住み着いて、傷つけるだけ傷つけて自分は逃げるつもり?
 でも、あんただけなんだからね、あたしを傷つけることができるのは。
 ずっとそばにいて、あたしの心を傷付けた責任とりなさいよ」
「ア、アスカ?」
「あたし、日本に残る!」


エピローグへ続く

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